4階建ての2階部分

上の子:2013年生まれ 下の子:2015年生まれ

「人の手は、魔法の手だな」と父は言った。「人の手は安心する」。

11月19日(土)

父の見舞いに行った。

父はすい臓がんの患者である。ステージ4すい臓がん発覚から11か月くらいになる。ステージ4すい臓がんというのは実質死の宣告なようだ。投薬をして余命1年、という話であったがとりあえず11か月は生きている。紆余曲折を経て今は家にいる。

9年ほど前に彼の父が最期に暮らしていた部屋にベッドを入れて、父はよこになっていた。一応立って歩けるようだが、基本的には横になっている時間が長いのだという。

父はそういう状況にしては、比較的元気に見えた。私が来るというのもあるし、17時から会社の同期入社の友人とオンラインで話す会があるそうだ。1か月ぶりにPCを開くと言っている。

wifiが、切れちゃってるんだよな。と言って家のwifiの構成を詳しく教えてくれた。元・父の部屋のモデム、ルーター、分配器、そこからさらに元・弟の部屋のwifiルーター。指示通りたどっていくと元・父の部屋のマルチタップコンセントが外れてしまっており、各種機器の電源が落ちていた。コンセントも差しに行けないんだよな。階段があるから。

電源を差し直し、しばらくすると父の部屋のwifiが復活した。これで同期に会える。あとはwindows PCを立ち上げる。windows updateが走る。windows updateは余命いくばくの人間にも容赦なく訪れる。

昼食は神奈川あんかけラーメンだという。なんじゃそりゃ?「サンマーメンだよ」と父が言った。どうやら商標の理由で、市販品はサンマーメンを名乗れないのではないか。父、最近なかなかものが食べられていなかったが、この日はサンマーメンを半人前くらい食べていた。

午後も父のおしゃべりにつきあう。

肩に触れ、撫でてやった。骨ばった肩になったものだ。撫でてやる、という表現が実父に対して的確かどうかわからないが。

「人の手は、魔法の手だな」と父は言った。「人の手は安心する」。

私はあなたの魔法の手の庇護のもとで大きくなったのです。手の魔法を誰よりもよく知っているつもりです。

そして父はデジタル放送などについてひとしきり喋ったあとで寝た。

そのあと母と話し、母は母でいろいろ大変なようだ(当たり前だ)、そして玄米とみそとお菓子と鍋に入れるラーメンと小さなパックの納豆をもらって帰ってきた。

帰ってきたら子供らはバレエに行っていない時間で、家に着くなり妻から「八百屋行く?」と問われる。いいね。自転車に乗って八百屋に行く。大根1本98円だったので買ってきた。「森のかがやき」というリンゴも買ってきた。

夕食は塩豚と大根の煮物にした。